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広島高等裁判所岡山支部 昭和48年(行コ)5号 判決 1975年8月25日

岡山市丸ノ内二丁目五の一

控訴人

牧野実

右訴訟代理人弁護士

名和駿吉

同市天神町三番二三号

被控訴人

岡山東税務署長

梶原茂

右指定代理人

清水利夫

上山本一興

井上宣

島津厳

有藤秀樹

右当事者間の所得税更正決定等取消請求控訴事件について、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は「原判決を取消す。被控訴人が控訴人に対し昭和三九年一二月一〇日付でなした控訴人の昭和三八年度分の所得税につき課税総所得金額を五五〇万五、六〇〇円(所得税額一九二万五、五二〇円)とする更正処分のうち課税総所得金額五六万〇、二〇〇円(所得税額七万四、六〇〇円)を超える部分を取消す。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人指定代理人は主文同旨の判決を求めた。

当事者双方の事実上の主張および証拠関係は次のとおり付加するほか、原判決事実摘示と同一であるから、これを引用する。

控訴代理人の陳述

控訴人が払下を受けた原判決添付物件目録(九)(一〇)(一一)(一二)の土地は控訴人が従前借地権を有していた(二)土地に代わる性質のものである。

しかも都市計画の実施が大幅に遅延したため(九)土地は換地指定になるか否か不明のまゝ長期間放置され(一〇)(一一)(一二)土地も仮換地指定後も整地されず一〇年間も使用できない状態におかれ、その結果控訴人は原審で主張したとおりの不測の損害を蒙ることになつたもので、これら二、八九〇万七、四一三円も譲渡に関する経費として控除すべきである。

証拠関係

控訴代理人は当審における証人伍賀厚の証言並びに控訴人本人の尋問結果を援用した。

理由

当裁判所も控訴人の本訴請求は失当として棄却すべきものと判断するが、その理由は次のとおり付加訂正するほか、原判決理由記載のとおりであるから、これを引用する。

一、原判決五枚目裏一〇行目の「損害は」の次に「当審における控訴人の主張を考慮してみても、」を加える。

二、当審における控訴人本人尋問結果中右引用にかかる認定、判断に牴触する部分は、当該認定の用に供した各証拠に対比して、にわかに措信できず、又当審証人伍賀厚の証言によつても右認定を左右することはできない。

三、なお本件譲渡所得計算に事業用資産買換についての租税特別措置法の特例の適用が認められないことについては次の判断を加える。

同法三八条の八第二項で準用する同法三八条の五第二項によれば、個人が事業用資産の買換の特例を受けた買換資産については、その取得価額が譲渡資産の譲渡による収入を超えるときであつても、新築貸家住宅の割増償却(同法一四条)の規定の適用はない旨定められているところ、成立に争いがない甲第二一号証の一ないし六、第二二号証の一ないし四、第二三号証の一ないし五、第二四、第二五号証の各一ないし六、及び弁論の全趣旨によれば、控訴人は被控訴人に提出した昭和三九年分から四三年分の所得税確定申告において本件買換資産(控訴人主張の新築の牧電ビル)について同法一四条所定割増償却の適用を受けていることが認められる。これは本件土地の譲渡及びそれ故この点からするも本件貸家住宅の新築について控訴人自ら右特例の適用がないことを認識していたことの証左というべきである。

よつて被控訴人のなした本件更正処分に違法はないから、控訴人の請求を棄却した原判決は相当であり、本件控訴は理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 渡辺忠之 裁判官 山下進 裁判官 篠森真之)

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